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アルコール健康障害対策基本法成立!
平成25年12月7日、臨時国会参議院本会議において、標記基本法が可決されました。全断連結成以来の念願が遂に成就したことになります。
昭和38年11月10日 結成記念大会の共同宣言から数えて50年、アルコーノレ問題議員懇談会の発足から26年、今回の基本法制定推進活動開始から3年余、漸くアルコール依存症等関連問題の包括的解決への道筋が開けました。
ここに至るまで、アルコール問題議員連盟支援作戦の展開等、ご協力いただいた各断酒会・連合会の皆さまには、厚く御礼申し上げます。
さて、これからが本番です!
基本法の果実を真に断酒会のものにするには、これから幾つものハードルを一致団結して越えていかなければなりません。各地域ともハードノレを越えるための組織的体力を準備しましょう。
(今後の見通し)
1.基本法は6か月以内に施行されます。
2.施行から2年以内に「アルコール健康障害対策基本計画」が内閣府で策定されます。
3.基本計画には、基本法第3章に定める「基本的施策」が具体的に盛り込まれます。
4.基本計画策定にあたっては、「アルコール健康障害対策関係者会議」の意見を聴取することが定められています。
5. 「アルコール健康障害対策関係者会議」は、アノレコール健康障害に係わる専門家、関係者、当事者及び家族により構成されます。
6.都道府県は、内閣府による「アルコール健康障害対策基本計画」に基づき、地域の実情に沿った「都道府県アノレコール健康障害対策基本計画」を策定することになります。都道府県でも「アルコール健康障害対策関係者会議」が設置されるでしょう。
7. 11月10日〜16日が「アルコール関連問題啓発週間」になります。断酒宣言の日記念全国キャンベーンに大きな励みとなります。
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アルコール問題に特化した初の法律案が策定され、国会上程ヘ
超党派の国会議員連盟「アルコール関連問題議員連盟」(会長 桜井 充参議院議員)は、昨年(平成23年)11月、アルコール関連問題の対策法「アルコール健康障害対策基本法」法案骨子(案)を議連総会で決定、今国会中に上程することにした。
アルコール依存症の救済などに光明を与えるものと、関係者は期待している。
法案は以下のとおり。
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アルコール健康障害対策基本法案骨子(案) 2012 年11 月14 日
1. 立法の動機
アルコール健康障害が、本人の健康をむしばむのみならず、その家族への深刻な影響や 重大な社会問題を生じさせる危険性が高いこと。
2. 立法の内容・目的
アルコール健康障害対策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民の健康の保護を図る とともに、安心して暮らせる社会の実現に寄与すること。
第2 定義アルコール健康障害とは、アルコール依存症その他の多量の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦 の飲酒等の不適切な飲酒の影響による心身の健康障害をいうこと。
第3 基本理念
1. 予防対策及び支援の実施
アルコール健康障害の発生、進行及び再発の各段階に応じた予防対策を適切に実施す るとともに、アルコール健康障害を有する者とその家族が日常生活及び社会生活を円滑に 営むことができるように支援すること。
2. 関連施策との有機的な連携
アルコール健康障害対策を実施するに当たっては、アルコール健康障害が自殺、虐待、 暴力、飲酒運転等の問題に密接に関連することに鑑み、アルコール健康障害に関連して生 ずるこれらの問題の根本的な解決に資するよう、これらの問題に係る施策との有機的な連 携を図ること。
第4 責務
1. 国の責務
アルコール健康障害対策を総合的に策定・実施すること。
2. 地方公共団体の責務
国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じたアルコール健康障害対策を策定・実施 すること。
3. 酒類の製造又は販売を行う事業者の責務
(1) 酒類の製造又は販売(飲用に供することを含む。以下同じ。)を行う事業者は、国・地
方公共団体のアルコール健康障害対策に協力するよう努めること。
(2) 酒類の製造又は販売を行う事業者は、酒類の製造又は販売に際して、アルコール
健康障害を発生させるような不適切な飲酒を誘引することのないよう努めること。
4. 医師その他の医療関係者の責務
(1) 国・地方公共団体のアルコール健康障害対策に協力するよう努めること。
(2) アルコール健康障害に係る良質かつ適切な医療を行うよう努めること。
5. 健康増進事業実施者の責務
国・地方公共団体のアルコール健康障害対策に協力するよう努めること。
6. 国民の責務
アルコール関連問題(アルコール健康障害及びこれに関連して生ずる自殺、虐待、暴力、飲酒運転等の問題をいう。以下同じ。)に関する関心と理解を深め、アルコール健康障害の予防に必要な注意を払うよう努めること。
第5 アルコール関連問題啓発週間国民の間に広くアルコール関連問題に関する関心と理解を深めるための「アルコール関 連問題啓発週間」を設けること。
第6 基本計画等1. 国の基本計画
(1) アルコール健康障害対策の推進に関する基本計画を策定すること。
(2) 基本計画に定める施策については、原則として、具体的な目標及びその達成の時期を定めること。
(3) 基本計画を策定したときは、国会報告及び公表を行うこと。
(4) 適時に、(2)の目標の達成状況を調査し、公表すること。
(5) 基本計画については、アルコール健康障害対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも5年ごとに検討を加え、必要があると認めるときには変更すること。
2. 都道府県計画
都道府県におけるアルコール健康障害対策の推進に関する計画を策定すること。
第7 基本的施策1. 教育・学習等
国民がアルコール関連問題についての関心と理解を深めることができるよう、家庭、学校、職場、地域その他の様々な場における教育・学習の振興及び広報活動等を通じた知識の普及のため、必要な施策を講ずること。
2. 不適切な飲酒の誘引の防止
酒類の表示、広告その他販売の方法について、アルコール健康障害を発生させるような 不適切な飲酒を誘引することとならないようにするため、必要な施策を講ずること。
3. 健康診断・保健指導
アルコール健康障害の発生の予防に資するよう、アルコール健康障害に係る健康診断 及び保健指導を推進するため、必要な施策を講ずること。
4. 医療提供体制の整備
アルコール健康障害に係る医療について、一般的な診療において行われるものを含め たアルコール健康障害の進行を予防するための節酒指導及びアルコール依存症の専門 的な治療を受けさせるための指導の充実、一般的な診療を行う医療機関と専門的な医療 機関との連携の確保、アルコール依存症に係る専門的な治療及びリハビリテーションの充 実その他の必要な施策を講ずること。
5. 関連する問題を起こした者に対する教育指導等
アルコール健康障害に関連して自殺、虐待、暴力、飲酒運転等の問題を起こした者に対 し、当該者に係るアルコール関連問題の状況に応じた教育指導等を推進するため、必要 な施策を講ずること。
6. 社会復帰の支援
アルコール依存症にかかった者の円滑な社会復帰に資するよう、就労支援その他の支 援を推進するため、必要な施策を講ずること。
7. 相談支援
6のほか、アルコール健康障害を有し、又は有していた者及びその家族に対する相談支 援を推進するため、必要な施策を講ずること。
8. 民間団体に対する支援
アルコール依存症にかかった者が互いに支え合ってその再発を予防するための活動そ の他のアルコール健康障害対策に関する自発的な活動を行う民間の団体に対する支援 を行うため、必要な施策を講ずること。
9. 人材の確保等
医療、保健、福祉、教育、矯正等に関する業務に従事する者について、アルコール関連 問題に関し十分な知識を有する人材の確保・養成を図るために必要な施策を講ずること。
10. 調査研究の推進
アルコール健康障害の発生、進行及び再発の予防並びに治療の方法に関する研究、ア ルコール関連問題に関する実態調査その他の調査研究の推進のため、必要な施策を講 ずること。
第8 アルコール健康障害対策推進会議1. 関係行政機関の連絡調整
厚生労働省、文部科学省、財務省、法務省、警察庁その他の関係行政機関の職員をも って構成するアルコール健康障害対策推進会議を設け、アルコール健康障害対策の総合 的、効果的かつ効率的な推進を図るための連絡調整を行うこと。
2. 関係者の意見の反映
厚生労働省、文部科学省、財務省、法務省及び警察庁はアルコール関連問題に関し専 門的知識を有する者、アルコール健康障害を有し、又は有していた者及びその家族を代 表する者等によって構成するアルコール健康障害対策関係者会議を設け、1の連絡調整 を行うに際しては、その意見を聴くこと。
第9 検討この法律の施行後3年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、必要が あると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
中山秀紀(久里浜アルコール症センター 現:久里浜医療センター)
出典:簡易版「アルコール白書」
編集:日本アルコール関連問題学会
日本アルコール・薬物医学会
日本アルコール精神医学会
要旨
本文
本邦は飲酒を肯定し酩酊まで部分的に許容するといった、非常に寛容な飲酒文化を持ち、アルコール飲料は安価かつ容易に入手可能である。飲酒人口も非常に多く、2006 年の厚生労働省の調査では成人男性の66.4%、33.3%、成人女性の32.9%、6.1%がそれぞれ飲酒、毎日飲酒していると推測されている。また2003 年の厚生労働省研究班の調査では、約80 万人がアルコール依存症であると推測されている。飲酒は人間関係の潤滑油やストレス解消手段としての側面を持つ。しかし酩酊による交通事故、犯罪、長期飲用による依存症や身体疾患などの健康被害、医療費の上昇、生産性の低下、家族等の周囲の者への精神的苦痛などの負の側面があり、大きな損失を生む。
アルコールによる社会的損失は、アルコール消費に伴い、社会全体によって負担させられる実質的損失および貨幣的損失とされる。精神的苦痛などの貨幣換算のできない費用は通常含まれない。
中村らは、1987 年の本邦におけるアルコール乱用による社会的費用を推計した(表1)。アルコール乱用に関連する医療費は約1 兆957 億円と推定され、国民医療費の6.9%に相当した。アルコールに関連した死亡者数は年間男性21015 名、女性8173 名であり、これら死亡による間接費用の損失は約9230 億円と推定された。アルコール乱用に伴う疾病による損失は4 兆4156 億円と推定された。アルコール乱用による社会的費用の合計は6 兆6375 億円と推定された。これは当時の国内総生産(GDP)の約1.9%にあたると報告されている1)。なお内閣府発表による2008 年度のGDP(約494 兆1987 億円)の1.9%は、9 兆3898 億円に相当する。また欧米の報告でもアルコール乱用による社会的費用はGDP の0.5〜2.7%にあたると推定されている2)。
1) Nakamura K, Tanaka A, Tanaka T: The Social Cost of Alcohol Abuse in Japan. J Stud Alcohol,54: 618-625, 1993.
2) World Health Organization: International Guide for Monitoring Alcohol Consumption andRelated Harm p3-15, 2000.
(100 万円) | |
主費用 | |
直接費用 | |
治療 | 1,174,190 |
医療費 | (1,095,687) |
その他の治療費用 | (78,503) |
支援 | 88,586 |
間接費用 | |
死亡 | 923,081 |
有病 | 4,415,597 |
生産性の低下 | (4,257,277) |
労働不能による損失 | (158,320) |
関連費用 | |
直接費用 | |
自動車事故(物損) | 3,498 |
犯罪 | 151 |
社会福祉プログラム | 23,477 |
その他 | 8,915 |
合計 | 6,637,495 |